水彩画を紡ぐ。
パレットの一隅。そこに広がる沈黙の領域は、決して埋め尽くされることのない、繊細にして曖昧な虚無の刻印である。それは雑味を帯びた純白として佇み、揺るぎなき存在感を放つ。
一滴の色彩を垂らせば、不可逆の淵へと堕ちてゆくことを知りつつも、如何にしても筆は色彩を渇望する。油彩の厚みが救済をもたらすであろう境地を夢想しながら。
色彩と水が交錯し、深淵に沈潜する刹那、重ね描きの不可能性は無慈悲にも時の経過を告げる。
希釈しても紙はその均衡の破綻を露呈し、筆先はいかなる理性の命令にも従わず、気づけば無意識の奔放な運動に安寧が宿っている。
しかし、それこそが不完全の証左であり、揺るぎなき真実の顕現である。
他の題材に意識を逸らすことで、この不器用な虚白が過去のものとなるだろうか。
私が知るところ、あの雑味を孕んだ空白は、白以外で埋めることを許さぬ境界線なのだ。
それは限界にして、私が抱える深層の無力の証明。
それでもなお、筆を止めずして描き続けるほかないのだ。