木陰がまるで私を嘲笑うかのように摩擦を続ける。
誰も居ない道で、なぜか鼓膜にまで粒子が押し寄せる。覚えのある無数の音が私をもてなすのだ。
ベッドの中にいるように、誰かと誰かが溶け合っている。そして私もまた、誰かとたしかに触れ合っている。
白線の上で、プラスチックの人型が大声で叫んでいる。私はその物体に近づき、チラシを受け取る。
「出口の見える無料相談所」
有り余る衝動をそのチラシに注ぎバス停に投げ捨てる。行き先もないまま、どこかへ滑り込む列を待つ。
虚ろな目線の先に「便利屋」と書かれた看板が私を冷笑するように聳え立っている。
「家庭内外の雑用を引き受けます。心配事等、気軽にお電話ください。」
小刻みな貧乏揺すりは古びたバス停を雑にハックし、私は無意識のうちに電話をかけていた。
悩み事すらたった三千円で片付けられる気がした。
公衆電話を握り締めながら覚えのあるような言語を受け流していると、目の前には無数の蛍が私を見て見ぬふりしている。
美しい。だが皆、同じ色をしている。
あっけに取られていると、表情を持つ一匹の蛍が私の掌で音を発する。
目が合っているのに、何も聞こえない。そのもどかしさに、何故か快感を覚える。
掌で踊り出すそれは、笑顔のような表情で謳い続けるのだ──