貴方の血に濡れた僕は、歓喜にも似た遠吠えを夜の底に放つ。
だがそれは、はじめて肺を満たした空気に対する裂けるような嘆きの応答であった。
貴方の体温を渇望し、真空と重力の狭間で、名もなき震えに身を委ねる。
貴方が背負ってきた苦難を、僕はまだ知らない。だがこの身にかつて二度とは得られぬであろう真実の愛をたしかに感じた。
貴方の輪郭が、静かに僕の内奥へと溶けてゆく。
絶望の深淵に沈みながら、貴方は僕を見つめていた。その瞳は、言葉の代わりに祈りを宿し、僕という存在に沈黙の誓いを刻み込む。
その小さく広大な背を、片時も見逃すことができない。
命が限界を迎える寸前、意識の臨界にそっと射す一条の光がある。僕の深い闇を優しくなぞりながら、微かにその奥を照らす。
同じ血と骨に宿る僕たちは、まだ互いの痛みを知らない。それを言葉にした途端、感情は粒子のように崩れ、砂となって消え失せるのだ。
残酷で有限な愛。僕はその一滴の永遠を全身で受け取ってしまった。
黒い瞳は無垢なる空白に呑みこまれ、その虚ろさが皮肉にも僕を満たしてゆく。
もし貴方のためであるならば、どんな苦しみにも耐えられる。貴方を守り、抱きしめ、その命をこの腕に宿すために、僕はすべてを差し出すだろう。
遠吠えをあげたあの日から──
誕生は洗脳となった。
貴方を架空の神として祀りながら、現実という岸辺を離れ、その向こう側へと静かに旅立ってゆく。